第25章 high sensitivity
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「クウイゴスの木片??」
アルコはシルバーが発した聞いたことのない単語を繰り返した。
「ああ。あのボロ船で行くなら絶対に必要じゃ。浮力にもなるし、アレさえあれば無駄な力を加えずに漕ぐこともできる。
しかし、無いとなると……」
シルバーはアルコが淹れたコーヒーをすすって考え込んでしまった。
彼が朝からいなかったのは、街の造船所を一回りして『クウイゴス』という“スゴい浮く”木片を探していたからだった。
それは、多少 高価ではあるが造船界隈には広く出回っている木材らしい。
『絶対に必要』というが、そもそも漂うだけの航海を約束している。それがあれば少しでも安全な航海になるのでは というシルバーの考えだったが、アルコはその心づかいだけで十分な気がした。
「こうなったら……、せめてわしの船で行け」
「ダメだ」
シルバーの提案を、ローが即座に はねのけた。
「なぜじゃ、小僧。今さら遠慮するな」
「遠慮なんかしてねェよ。どっちにしろ同じなら、あの船で十分だ」
「死にたいのか」
「死なねェよ」
せめて新しい方の船を譲りたいシルバーと、古い方の船で十分だと受け取らないロー。
どちらも引く気はないらしい。
どちらの言い分も理解できたアルコは、口をつぐむしかなかった。
口を開いたのは、いつの間にかローのそばに来ていたアイビーだった。
「ロー、受け取ったら? じいさんがそうして欲しいって言ってる」
ローは緑色の瞳を真っ直ぐに向けてくるアイビーを見据え返し、その金髪に手を置いた。
「お前は…、今はあの“新しい方の船”に乗ってるんだろ」
「そうだけど……?」
「??」
シルバーは、宙に浮くローの手と誰もいない場所に語りかけるような仕草に混乱を隠せなかった。
やがてローはシルバーに向き直り、再びハッキリと断った。
「ジジィの新しい方の船は、受け取れねェ。あの船には、ジジィの『クラバウターマン』がついているからな」
「!!」
アルコもニッコリと笑って、ローに同意した。