第25章 high sensitivity
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まぶたに、柔らかく暖かい感触。
その穏和な刺激で、アルコは重いまぶたをゆっくりと開けた。
まぶたからひたいへ
くすぐったさで、眉をしかめて「う」と声を漏らす。
ぼんやりした頭で浮遊感に酔いしれながら、目の前にある見慣れたシンボルに手を伸ばした。
胸に刻まれたハートのシンボル
指の背で ほぼ無意識にスリスリと撫でると、ひたいに「フッ」と冷たい息がかかった。
「……おはよ…」
「起きたか」
(『起きたか』って…、起こしたんじゃない。キスしたでしょ、今)
抱きしめられるような形で、目覚めた。シルバーの家の狭い部屋の狭いベッドの上で。
「もしかして……何日?」
「心配するな。フツーに翌朝だ」
また何日も眠っていた訳ではないようだ。アルコは安堵の息を吐く。
“ジブラ”と対面したあの日、船着き場に戻ると琥珀色の髪の女性が待っていた。シルバーは女性と抱き合い、涙を流した。
少年はまたいつの間にかいなくなっていた。
何があったのかは、聞かない。
聞かなくてもわかった。
二人にとって、“アイビー”が大切な存在であることも。
その“彼”は、本当は すでに この世にはいないことも。
10年以上 ────
『疑い』『後悔』『恨み』『悔恨』
様々な感情や疑惑、自分を責め、世間からの声と闘ってきたことも。
“アイビー”もまた、それを密かに見守ってきたことも。
残された人達が「生きて」いられたのも、きっと“彼”が見守ってきたおかげだろう。
そして、ようやくそれらが解き放たれたことも ────