第24章 老人と船
(足場が……持たねェか)
『闘うな』
シルバーにそう言われたばかりだ
あれだけの巨体に対して この場で一撃を繰り出せば、その反作用で船底の板張りは損傷するだろう
かといって、空中で可能だろうか
──── とにかく やってみるしかねェ
「“タクト”」
狙いは“ジブラ”の左のエラ。
それを差し出させるように、ローは指を動かした。
左の喉元にある3本の筋は、ぬめりのある皮膚が時折パタパタと隙間をつくる。
“ジブラ”は相変わらずエラにまでは届かない短い手で、涙を流しながら もがくような仕草をしている。
ローは“ジブラ”の目線の高さまで、大きく飛びあがった。
この巨体……
狙いを定めきれていなければ
やはり厳しい
足場がなくては……
3本のエラをすべて くり貫くには、両手を広げても足りない。
ローは足掛かりとして船のマストを利用しようと、滞空したまま下を見る。
いや、マストからでは届かない
マストまで“ジブラ”を寄せるか
そんなことをして、はたして船は もつだろうか
「────!!」
アルコの音色が、音を長く伸ばして止んだことに気づいた。
見ると、アルコはシルバーの船の縁ギリギリの所に立って“ジブラ”に向かって腕を伸ばし、大剣を差し出していた。
珀鉛でできた幅広の刀身
足場としては十分過ぎる
ローは迷いなく、右足で切先を踏みしめる。
「うぅっ…………!」
足元からうめき声があがり剣先がフラリと沈むが、持ちこたえたようだ。
アルコは歯を食い縛り苦悶の表情で、両腕で大剣を握りしめ 背筋で踏ん張った。素肌の方の前腕には、筋肉の筋がピキリと浮き上がる。上向きに跳ね返すように力を入れて踏みとどまった。
アルコを信じてる
だから
おれは おれに 出来ることを