第24章 老人と船
ローは足元には目もくれず、“ジブラ”を鋭い目つきで見据え、観察する。
「────!!」
狙いを定めたのは、3本のうちの真ん中のエラ。
フープ状のロープのようなものが、鰓蓋(えらぶた)のスキマからのぞいていた。
ローは剣の切先で踏ん張った右足を軸に、低く構える。
「────“メス”」
「お前さん達、無茶苦茶じゃっ!!?」
「ん ──……んぁあっ!!!」
踏ん張り勝ったアルコは、大剣を振り上げるように上に乗っていたローを放り投げた。
ローはその力をバネにして“ジブラ”に一直線に向かっていく。
同時に、アルコの身体は 蹴り飛ばされたような反動で後ろに吹っ飛んだ ────
・・・
・・
・
スローモーションのように
船外まで身体を放り出しながら
見えたのは
ローによって四角く くり貫かれた外鰓
それに絡みつくのは
『わしの漁具は100年持つ! 壊れんから新しいのが売れんのじゃ』
10年以上前
シルバーが編み込んで作ったロープ
その中には
小さな 緑色の煌めきが
「アイビー…………、
そこにおったんか…………」
それを見て
膝から崩れ落ちるシルバー
──── そうか
ぼくの名前は『アイビー』
あの日
あの時
死んだのか
それから ずっと
“ジブラ”のエラの中に
ローが無事 船上に着地して
エラに絡まるロープの中から
緑色の石がついた指輪を取り上げるのを見届けてから
海上に放り出されたアルコの身体は、背中から勢いよく着水した。