第24章 老人と船
「お礼に…なるかわからないですが。弾いてもいいですか」
「「!」」
ローと少年は、アルコに気づかれないほど一瞬だけ目配せをし合った。
アルコは座ったまま、背負っていた竪琴を胸に抱え直す。
「ああ、それか。聴いてみたいと思っとった」
シルバーは優しい笑顔で、アルコと向かい合うようにその場にあぐらをかいて、水筒を取り出し喉を潤した。
「何がいいかな」
アルコは両手の指をバラバラに動かして肩を回しながら、ローに聞いた。
「アルコの ───“感性”で選べ」
「了解、“キャプテン”」
少し迷ってから、小さく「よし」と言って深呼吸をする。
アルコが弾き始めたのは、4つの和音の繰り返し
3つ目の和音は 1音だけ はみ出たようなコードだが、リフレインする度に違和感はなくなり、むしろその音がないと物足りないような・クセになるようなコード進行だった
左手でその4つの和音を、3拍ずつのリズムで 繰り返し刻む
8分の6拍子
3拍子にも4拍子にも聞こえる心地よいリズムに、そのうち右手で素直な旋律を乗せた
──── この曲は
“育ての父”ミホークが愛した曲
彼と二人で 小舟で旅をすると
こんな風に 大海原にポツンとたたずむと
必ず一度は この曲を所望された
中音が強く、遥かに遠い印象の
この曲
この世界に浮かぶ島々の
観たこともない 景色
想像をしたこともない 文化
気を失いそうになるほど
遥かに遠い 海と空の下に
私達は 小さく存在していることを
感じる