第24章 老人と船
「その船では、外洋までは行けんぞ。せいぜい近海…隣の島までは、きっとたどり着けやせん。
こっちの船でも行けるかどうか あやしいとこじゃ」
「やってみねェと、わからねェだろ」
「いや、わかる。無理じゃ」
「……」
シルバーにそう言われると、無視できないものがあった。彼の手や顔のシワ、存在そのものが それだけの経験を物語っている。
「それでも……」
ローは島ひとつない遠くの水平線を見つめながら、静かな熱を燃やすように言った。
「……それでも、おれは進まなければならない」
シルバーは困った顔で言葉を失った。少年の視線もローの真剣な顔にとらえられていた。
「シルバーさん」
アルコはローのそのつぶやきを聞いて、決意したようにシルバーをみた。
「助言を……、くださいませんか。
できれば、少しでも たどり着ける可能性が高くなるように」
ローは船長(キャプテン)
船長が行くと決めたなら、自分はそれに全力で従うだけだ
誰に何を言われようと、ローの決断を信じる
クルーの皆がいない今、自分だけはどんな状況でもローを信じて、そばで支えなければ
「無茶苦茶な若者達め。
……まあ、わしも昔はそうじゃったか」
自嘲気味に笑うシルバーをみて、少年はどこか誇らしげにしていた。
シルバーはローの乗っている古い船を手繰り寄せた。
杉の樹皮のように日焼けした傷だらけの腕で船の縁を持って、ギシギシと揺らす。その船に立って乗っていたローは、それだけで足元をとられそうだった。
不自然に歪むようにきしむ船底。
確かに、この船はもうギリギリだ。
「帆を張りすぎるな。
漕ぐな。
闘うな。
大きな衝撃は、もう一撃も持たん。
……漂え。
海の意思に、ただ、したがえ。
海流に乗って漂うだけなら、ひょっとしたら たどり着けるかもしれん」
「わかった」
「ありがとう、シルバーさん」