第24章 老人と船
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翌朝
早朝から、ローとアルコは船着き場で船の手入れをしていた。
するとそこへ、シルバーがやってきた。彼は静かに「海に出るか」と言った。
「この船を引っ張ってくれ」
「……」
「走らせてみたい。引っ張ってくれないか」
「……繋げ」
ローの頼みを聞き入れたシルバーは、古い方の船にロープの束を投げ入れた。
「こっちのほうが危険だ。アルコはそっちに乗れ」
ローはシルバーの船をアゴで指した。
「“私達”も、乗ってもいいですか?」
アルコは、いつの間にかそばにいた少年の肩を抱くように手を添えて、シルバーに尋ねた。
「何を今さら。はよ乗らんか。
沖に網を仕掛けるから、手伝ってくれよ」
シルバーは少し笑って 船についている錆びた琥珀色の鐘を2度 鳴らした。
少年は目を閉じて大きく息を吸い込みながら、その音色を聞いていた。
*
「ロー、どうかな」
「悪くねェ…と思うが」
ローは、乗っている古い船の帆をあやつって 控えめに風を受けている。
「たいしたもんじゃ。
走らせば…どうにか走るもんなんじゃな」
沖まで進み、刺し網を仕掛けるのをローとアルコも手伝った。
作業が一段落したところで、少年が口を開いた。
「休憩、休憩。
ねぇ アルコ、何か弾いてよ」
「え。私??」
「てめェ……。
しかも、お前は何もしてねェじゃねェか」
……バコッ!!!
少年に“にらみ”を利かせて そう言ったローの頭を、シルバーが前の船からオールで殴った。
突然過ぎる出来事に、ローは避けきれず頭から星が飛んだ。
「……!!? ジジィ…」
「小僧、貴様! お嬢さんに向かってなんちゅうことを言っとる!!」
「違ッ………」
少年の姿や声は、シルバーには届いていないのだ。
少年は目を薄くして、ローに悪魔のような笑みを向けた。