第24章 老人と船
「あぁ、うまい。女の料理は、本当にうまい!」
「あ、ありがとうございます」
まるで“女”が作れば何でもいいみたいな言い方に、プレッシャーがなくて助かる。
「小僧、知っとるか。“海”は“女”ぞ」
「?」
「海はやさしくて、とてもキレイだ。
大いなる恵みを与えてくれる。
しかし、時に残酷にもなる。それも、急にだぞ。
時には…大きな代償を払わされることもある」
急に語り出したシルバーは真剣で、優しくて、辛そうな顔をしていた。
「尊敬しろ。敬意を払え。“海”と“女”に」
「ああ……そうだな」
ローは珍しくシルバーに口ごたえせずに同意した。
「アルコ…うまいよ。漬け物も」
「あら。早速、尊敬? ありがとう」
シルバーの教えを実践したかのようなローの唐突な感想に、軽い皮肉を返すと
「本気だ。もっと漬けときゃ、もっとうまくなるんだろ。…これから毎日でも食いてェな」
真面目にそう言ってボリボリと咀嚼した。
ローがこんな風に言ってくれるなんて、確実に少年とシルバーの影響だろう。
「ハッハッハッハッ!!」
「ありがとう、シルバーさん」
「なんでジジィに礼を言うんだ」
シルバーは豪快に笑い続けている。アルコも「ふふふ」と釣られて笑ったが、いつまでも笑い止まないシルバーはついに涙を流し始めた。
ローとアルコは息を飲む。
「ハハハハハハ……
…………あの子らがおったらなぁー……。
お前さん達みたいになっとったんかなぁー…」
シワの深い目尻に、涙が溜まっていった。
アルコはテーブルの上でフォークを固く握りしめたままのシルバーの手を優しく包んだ。
「あの子なら、まだいますよ。シルバーさんのことを、とても心配している」