第24章 老人と船
日が落ちる前に少しでも船の作業をするために、三人はシルバーの家に戻った。
買い物した荷物を家に置いて、すぐに船着き場へ行った。
古い船はシン・・・と凪いだ水面に、ただ浮かんでいる。
少年とシルバーが、それぞれ『死んでいる』と言った船。
死んでいるとしたら
誰が殺したんだろう
アルコは少年をチラリとみた。
『自分の名前も思い出せない』彼。
彼も苦しんでいるような気がした。
そんな彼に、安易に答えを求めるようなことはしなかった。
ローは少し ためらってから、その船に足を踏み入れた。細い幅の木を丁寧に継ぎ合わせて造られた船体が、その重みでぐっと沈むがすぐに安定した。
2本のマストのうち、ローは背丈の倍ほどある高い方に手を添える。帆を広げると所々、米袋のようなもので つぎはぎが施してあった。
「見たところ、異常はないが……」
ローはマストを撫でながらつぶやいた。
((確かに、『死んでいる』))
ローとアルコは、その形容を受け入れざるを得なかった。
それは“船”というより“ただの浮き”のような
『死んでいる』というか
『走る気がない』というか
『進む気がしない』というか
どうして、こうなっているんだろう
アルコは首をひねった。
「とりあえず、磨いてみようか」
ローは船のあちこちを触って“物理的”に点検しているようだが、アルコにはもう少し“精神的な”ことが原因のような気がした。
水を汲んだバケツと新しい雑巾を数枚持ってきたアルコは、船に乗り込み膝をついて板張りの船体を丁寧に こすり始めた。
少年は船着き場の桟橋から
シルバーは家の窓辺から
二人が船の手入れをしているのを、神妙な顔で見ていた。