第24章 老人と船
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ローはパラソルの下で2本目のビールを飲みながら、アイスクリームショップのワゴンに並んでいるアルコの背中をみていた。
ちょうど並ぶタイミングが悪かったらしい。
アルコの前には5、6人の人が並んでいるが、数分たった今も列は進まず、アルコの後ろには誰も並ばなかった。
(まだ ずいぶん時間がかかりそうだな)
頬杖をついて、手の届かないところに行ってしまった黒髪がかかる背中をみつめる。
いつも背負っている竪琴は、椅子に立て掛けられたままだ。その白銀色の装飾が、視界の端でキラッと光った。
“それ”に気づいたローはそのままの姿勢で、いつの間にか“空席ではなくなった”その椅子をチラリと見やる。
(“コイツ”のこと天使だとか言ってたが、アルコのほうがよっぽど…)
その背中に
今に本当に羽根でも生えて
どこにでも自由に飛んでいっちまいそうな
その身軽さ
いや…アルコは本当に
いずれ自由になる
“珀鉛病”が治れば
そうなったら、アルコは本当に飛んでいくんだろう
おれを頼ったり
おれに笑いかけたり
こんな風に
当たり前のように
おれのそばにいることは
なくなるんだろうか
「聞いてみればいいのに。
『治っても一緒にいて欲しい』って言えばいいのに。どうして望まないの?」
「思考を読むな、ガキ。
…おれには、そんな資格はない」
「資格がいるの?
どこで取れるの、その資格。ローが取れなくても、ぼくは取っておきたい」
何 言ってんだ
お前なんかの どこが天使だ
その笑い方、天使どころか悪魔みてェだろ
何者なんだよ、お前は