第24章 老人と船
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シルバーはこの日は海に出ず、道具作りの仕事をすると言っていた。
ローとアルコは作業を続けるシルバーの背中に問いかけた。
「私達、街へ買い出しに行こうかと思うんですが。何か必要なものはありますか?」
シルバーは一旦、金づちでガンガン何かを打ちつけている作業の手を止めて振り返った。
「小麦粉を頼む。確か きれそうじゃった。
それより お嬢さん、大丈夫なのか? 小僧、無理さすなよ」
「当たり前だ。おれは医者だぞ」
誰に向かって言ってるんだ、とでも言うように偉そうに返すと、シルバーは「ふん」と言って再び金づちを振り上げ始めた。
「あの古い船は…もう不要なのか」
ローがそう問いかけると、一瞬だけシルバーの金づちのリズムが不規則になった。
「あの船は……もう死んでる」
「浮かんでるんだ、直せばいけるだろ。譲って欲しい。いくらだ」
シルバーの叩く金づちの音が、ギン、ギンと 一層大きくなった。何かを振り払うように力任せに叩きながら、小さな声で言った。
「……持ってけ。お前に走らすことができるならな、小僧」
ローとアルコは静かに顔を見合わせた。