第24章 老人と船
「…何日、ですか?」
つい敬語になって、恐る恐る問いかける。
「3日」
「…ごめんなさい」
シルバーがコップに水を汲んでくれたので、アルコは喉を潤した。
「謝らせるな、小僧」
「おれに 言うな」
椅子の背もたれに片ひじを置いて、ふんぞり返っているローに なぜかシルバーが怒るので、アルコはさらに申し訳なくなった。
自分がしょんぼりしていると余計に空気が悪くなりそうだったので、できるだけ明るい声を出した。
「あの日の漁は、どうだったの? お魚、いっぱい採れた?」
「ああ。“今日も”採れたよ」
「今日も…」
ローは少しうんざりした様子で、ウィスキーグラスを持ち上げた。
グラスをかたむけるローは、引き締まったようにみえるのは、少し日焼けしているからか。
「小僧は なかなか筋がええぞ」
シルバーが笑いながら保冷されていた料理をアルコの前に次々と置いた。
「わ! 大きいね。これは…クエ?」
「そっちはな。こっちはブリの仲間で、刺身のヤツは…」
ローが心なしか嬉しそうな声で、説明を始めた。
親子か…、いや、おじいちゃんと孫みたいな二人は、箸を置く間もなく料理を勧めてくる。
長い睡眠
心のままに泣きじゃくった
不安でゆらぐ心をリセットして
空っぽになった頭
箸を動かしながら、ローの顔を盗み見る。
少し日焼けして、まさかの健康的なその姿に、アルコは笑みをこぼした。
「うまいか」
「うん。ありがとうー…」
ありがとう
大丈夫
まだ、大丈夫
だって、ローの側にいたいんだよ
だから、大丈夫
ありがとう
アルコは心の中で、あの不思議な少年に語りかけた。
相変わらずこの家には少年の姿はないが、その気配だけは漂う。
暖かい灯りと雰囲気の中
アルコは安定した心で、久しぶりの食事を楽しんでいた。