第24章 老人と船
*
朝になり、起きようとしたがローに寝てろと言われた。
正直、ありがたかった。
昨日治療された部分だろうか。喉の奥がチクチク痛むし、睡眠がまだ足りてない。
熱も下がっていないんだろう。
扉越しにローがシルバーに説明しているのが聞こえた。
『自分は医者で
彼女は“病気”があって
治療しながら旅をしている』
シルバーは大げさにとらえたようで、金はいらないから いくらでも滞在しろと言い出した。
ローが部屋に戻ってきて、飲み物とクッキーのようなものを持ってきてくれた。ありがたかったけど食べられる気がしなかったので、もう少し寝てから後で食べると言い、部屋に置いておいてもらった。
「シルバーが、あの船で漁に出る」と言うので、自分の体調は大丈夫だから同行するようにとローを促した。
ローは心配そうにしたが、「おいしいお魚いっぱい採ってきてよ」と言うと、ちょっと笑って了解してくれた。
例の“ジブラ”にも遭遇するかもしれない。
船のほうも、何とかなるといいけど。
様々な不安要素はあるけど、自分のせいでローを立ち止まらせる訳にはいかない。
それだけは嫌だ。
とにかく、早くなんとか熱を下げないと。
「待ってろ、お嬢さん! いっぱい採って帰って、元気が出る料理を作ってやるからな」
「作ってくれるんですか、やったー! 楽しみ。気をつけて」
「無理するな、寝てろよ」
「わかってる。その扉…開けておいてくれる?」
「ああ」
ローは狭い部屋の小さな扉を開け放した。部屋で寝ていても玄関に続く廊下がみえるようになった。
部屋にある縦に細長い嵌め殺しの窓からだけでは、朝であることを感じづらい。すりガラスのその窓からは景色は見えず、外が明るいか暗いかだけしかわからない。実際、昨晩は窓があったことに気づかなかったくらいだ。
廊下も薄暗いのだが、扉を開けてもらうと新しい空気が部屋に入ってきて、少しだけ部屋の閉塞感がやわらいだ。
「いってらっしゃい」
返事はなく、玄関の扉が閉まる音がして足音が遠ざかっていった。