第24章 老人と船
治療が終わってからは、ローは触れてこなかった。
治療の後だから安静にしなければならない。
またシルバーに気づかれては追い出されかねない。
それだけでも十分な理由だが、アルコには もうひとつ、そんな気分になれない理由があった。
『あの不思議な少年の気配がするから』
ここまで連れてきてくれた、あの少年。
ローが刀を抜いてゴタゴタやっているうちに、いつの間にかいなくなってしまった。
でも、まだ“ここにいる”ような気もした。
『子供…好きなのか』
ローに今朝、広場で聞かれたことを思い出す。
あの時、一瞬 頭によぎったことをごまかすような回答をした。
ローは好きなのかな、子供
あんな屁理屈みたいな答えせずに、ちゃんと素直に答えて聞いてみればよかった
『ローは、子供好きなの』
って
『もし子供ができたら…どうするの』
って
そんなの、困るに決まってるよね
潜水艦を降りてから
私達の関係は、ずいぶん安定してきたようには思う。
ローは相変わらず決定的な言葉はくれないけど
必要とされてるとは、思う。
大事にしてくれているとは、感じる。
そう言えば、あの時
前のセックスの時
『かわいい』って言ったら
『かわいい』って言い返してくれて
じゃあ、『好きだ』って言ったら
同じように返してくれるんだろうか ────
「何を考えるか、当ててやろうか」
狭い床で可能な限りのだらけた姿勢で座っているローが、思考をさえぎってきた。
心臓が一瞬だけ止まったが、すぐに平静をよそおう。
もしかして、思い詰めたような表情をしてしまっていたか…。それを取り消すように、横になったままで片眉をあげて挑発的に笑いかける。
「絶っっっ対、当たらないと思うけど。
賭けてもいい」
「何を賭ける」
「一万ベリー?」
「産めよ」