第24章 老人と船
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「お嬢さんはここを使うといい。小僧は、適当にしろ」
「ありがとうございます」
シルバーはアルコにタオルケットを渡して、玄関近くの扉を開けた。
部屋というよりは物置きのようなその部屋は、備えつけのベッドが部屋の半分を占めていた。かつて使用人か子供が使っていたかのような部屋だ。
シルバーがローにもタオルケットを渡すが、ローはそれを断った。
「ひとつでいい」
ローは親指を立てて、アルコと狭い部屋をクイッと指した。
「…お前達、夫婦(めおと)か」
「違います」
アルコがローの代わりに答えると、シルバーは怒り出した。
「なら、許さんぞっ! 男は床!! 嫌なら出ていけっ」
ローにタオルケットを押しつけて、ドスドスと足音を鳴らしながらリビングへ戻っていった。
「……なんなんだ」
苦笑いでその背中を見送った後
「じゃあ…、おやすみ」
ローに就寝のあいさつをしたのだが
「どこの床で、とは言われていない」
そう言って、狭い部屋に無理矢理入ってきた。
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ローは狭い床に片膝を立てて、ベッドに向き合うように壁に もたれて座った。
アルコがベッドに座って足を床におろしていると、それだけで部屋のスペースはいっぱいだった。
「あがる? …わかんないよ」
アルコはナイショ話をするように口に片手を添えて言い、ベッドに誘った。
「…いや。おれは疲れてねェし、眠くもねェ。ただ………」
そう言って這うように近づいてくる。
膝をよじ登れば、まもなく唇が重なる。
それを受け入れようと首を傾けると ────
ドスドスドス・・・
「虫取り網は、どこへいったかのー! 退治せにゃならん、虫がおるんじゃないんかっ?!」
ローは逆再生されたように再び床に戻り、壁に背を預けて頭をぐしゃぐしゃする。
「ジジィ…見聞色かよ」
アルコは声をあげて笑った。