第24章 老人と船
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小さなテーブルの中央に吊り下げられたライティングによって、暖かいオレンジ色に包み込まれている食卓。
アルコは、身を乗り出して震えるほどに険しい顔でローを見ていた。
「………そんなに見るなよ。
…大丈夫だ、フツーに食えるから」
「ホントっ?! よかったぁ~」
アルコは大げさに力を抜いて、椅子にもたれかかる。
「何が『フツーに食える』じゃ!
カッコつけおって。美味いよ、お嬢さん」
「はぁ~、よかった。
ありがとう、シルバーさん。優しい…」
老人は名をシルバーといった。
シルバーは和え物を口に運んでから、顔をほころばせたまま言った。
「ただ、年寄りには、コレは ちと しょっぱい」
「結局、文句言ってんじゃねェか、ジジィ」
「助言じゃ。年寄りのありがたーい 助言。
保存食としてはええが、和え物として食べるには、いささかしょっぱい」
「なるほど…そうですね。すみません…」
三人が囲む食卓には、アルコの作った魚の南蛮漬けと味噌汁、野菜を漬物風にしたシソの和え物が並ぶ。
新鮮そうな魚も、保存食のような料理にしてしまった。
家庭料理、というより旅する海賊料理だ。
真剣に考え込んでしまったアルコの頭を、シルバーはわしわしとなでた。
「女の作る飯は、なんでも美味い。
そうだろ、小僧っ!」
「おれは最初から、そう言ってる」
魚を背びれの骨ごと口に入れたローはそう言った。
──── よかった
こんなにすぐに、しかもよそのお宅で、ローに料理を振る舞う日が来るなんて。
しかし、なんとかなったことにアルコは心底ほっとした。
ほっとした気持ちで、ウイスキーをぐびぐびとあおり、はぁ~と笑顔で再びため息をついた。
充実したようなその顔を見た二人は笑った。
シルバーは豪快に、
ローは静かに、
笑った。