第24章 老人と船
生い茂る草本の道を海へと下ると、白いログハウスにたどり着いた。
砂浜の上に石垣で囲われたステージのような場所に、その家は建っていた。
家のすぐ横にある船着き場には先ほどの小型船と、もうひとつ一回り小さな古い船が停まっている。
「あるじゃねェか。もう一隻」
「あの船は………もう死んでる」
古い方の船について言った少年は、痛々しい表情をしていた。
(船が………死んでる?)
それも、彼が“わかること”なんだろうか。
アルコの心に、ある伝説が思い浮かぶ。
『クラバウターマン』
船乗りに語り継がれている伝説。
大切にされた船に宿るとされる妖精。
もしかして、この不思議な少年は妖精なんだろうか。
アルコは本気でそう考えた。
出会ったときから不思議な雰囲気だし、こんなに天使みたいなんだから、それもあり得る気がした。
それとも、記憶や脳にどこか損傷のある、普通の子供なんだろうか。
コンコンコン
潮風を避けるように奥まった玄関の白い扉を、ローが叩いた。
「すみませーん」
アルコがローと少年の後ろから、一歩下がって家全体に向かって声をかけた。
ローがもう一度ノックしようと拳を構えた時、ガチャリと扉が開いた。
アゴに沿って四角く髭を整えた、老人。
老人といっても髭と髪がグレーなだけで弱々しい雰囲気は一切なく、上半身からは黄色いシャツが はち切れそうなほど隆々とした筋肉がのぞいている。
ひたいに刻まれた深いシワや目尻のシミは、老人が長年 海とともに生きてきたことを感じさせた。
「船を くれ」
「…………」
扉はバタンと閉められた。
「ロー…、順番ってもんがあるでしょ」
「へぇ~、ローは下手クソなんだ」
「うるせェな、…めんどくせェだろ」
「「げっ…」」
再び開いた扉の奥には、老人が銛(もり)を携えて立っていた。