第24章 老人と船
「5年前、海王類がいっぱいこの島の海岸に打ち上がったの知ってる? 海王類も死んだし…“呪い”が伝染(うつ)って人もいっぱい死んだ。
それが 全部あのじいさんのせいだ、って。昔から“ジブラ”と闘ってる、じいさんが呼び寄せたんだって」
「例のストランディング事件か…」
「いや、でも原因は寄生虫だって言ってたよね。本も出てるって話でしょ」
「そんなの、街の人達はいちいち読んだりしないよ。皆、海王類を怒らせたあのじいさんのせいだって。その“呪い”なんだって」
「でも…」
アルコは反論するのをやめた。
自分だって、街の人を責められない。
だって、自分もディンの書いたその本を読んでないし、実際本の存在すら知らなかった。
──── 憶測は、事実になる
実際は伝染病ではない“珀鉛病”が、伝染る病気として迫害されたように。
「あんな無意味でバチあたりなこと、皆、やめて欲しがってる。
ローは強いんでしょ? あのじいさんをとめてよ。
アルコも海賊なんでしょ? 船を盗んじゃって、海に出られないようにしてよ」
すがるような言い方と瞳に、ローとアルコは言葉を失った。
「まあ、事情はだいたいわかったが…あのじいさんは10年もやってんだろ。おれ達が突然行って、どうこうできる話じゃなさそうだ。
それにアレは“闘い”というより ────」
ローは海水で濡れたアゴ髭に触りながら考えた。
ただ倒したい訳じゃない、複雑な事情がありそうだ。
「とにかく船は必要だし、話だけでもしに行ってみようよ。
あのおじいさん、どこに住んでるかわかる?」
「こっちだ」
海水をかぶってビショビショになったローの代わりにアルコは荷物と竪琴を背負って少年について歩く。
「おい、待て。…貸せ」
「大丈夫だよ」
ローは慌ててシャツを羽織り、刀を持って二人を追いかけた。