第24章 老人と船
「お母さんだ、じゃあね」
少年は座っていたところからぴょんと飛び降りて、広場の露店で買い物をしている琥珀(こはく)色の髪をした女性の後ろに走り寄った。
「………」
「どうした。誰と話していたんだ」
ローが戻ってきた。いつからいたんだろう。
「あの子」
「どこだ」
「ほら、そこの」
広場は多くの人でにぎわっている。ローが誰のことを言っているのか、わからないのも無理はない。
「金髪の、くりくりの。天使みたいな、男の子」
そこまで言ってようやくローはその子の姿をとらえることができたようで「ああ」と言った。
その声に、驚くように少年は振り返った。
こっちに向かって手を振ってきたので、アルコは笑顔で振り返した。少年を見やったまま小さな声でローは問いかけた。
「子供…好きなのか」
「その質問は…あまり好きじゃない」
アイスのコーンを口に含み終わったアルコは、手を払ってからイエスともノーとも言わない返事をした。
「ローは、お年寄りは好き?
男は? 女は?
子供だって中には好きな子も嫌いな子もいるし、ひとくくりにして、好きとか嫌いとか言えないよ」
「まぁ…な」
「でも、さっきのあの子は好き…かな。なんか不思議な感じがするよね」
もしかして本物の天使かな、と言ってニカッと笑った。
「あっちらしい。いくぞ」
アルコは座っていたところからピョンと飛び降りて、後ろに鎮座していた不思議な生き物の像を一瞥してから、ローの背中を追いかけた。
少年は再び振り返り、広場を去る二人の背中をいつまでも見つめていた。
少年の母親は、少年にも二人にも振り返ることはなく、買い物を続けていた。