第23章 応酬
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2日後の朝
船はグレート・鰤(ブリ)テン島に到着した。
到着の知らせを受けて、アルコは2日ぶりに部屋を出た。
ローはあれから、何度か部屋を出ていった。しかし、戻ってきてもとくに何も言わなかった。王妃やディンに“珀鉛病”について説明したのか、どんな反応をみせたのかはアルコは一切 聞かなかったのでわからなかった。
夜になってローに一度「甲板に出るか」と聞かれたが、ふるふると首を振って断った。するとローは「弾いてくれ」と言ったので、あまり悲しすぎず、明るすぎない曲を選び、静かに一曲だけ弾いた。
すべてをローに任せて、丸窓から外を見たり、ストレッチ風の鍛練をしてから、眠ったりした。
あまり食欲はなかったが、時々ローが持ってきてくれた食事をいただいた。
到着間際、海王類が姿を見せた。
ローは甲板に呼ばれて警戒にあたったが、部屋から様子をうかがっていたかぎり、衝突にはならなかったようだ。
甲板に出たアルコは久しぶりに風を慈しんだ。
整列している王国従事者の表情には、緊張感が漂っていた。
王妃を狙って生物の大群を呼び寄せた犯人が、王国の警備隊に引き渡されるようだ。
しかし内部犯であるため、どのような裁きになるかは微妙なところだろう。
王子は警備隊に厳しいことを言い続けている。
アルコはあまりそちらに目を向けず、しかし意識的に背筋を伸ばして、ローに続いて下船するために甲板を横切った。
「助かった」
海軍 大佐マジェスティが、ローに短く礼を言った。
「世話になったな」
「ありがとうございました」
ローに続いて、アルコは船に乗せてもらったことについて礼を言った。
「大丈夫なのか、体調は」
「え、ええ。ありがとう。お世話になりました」
ふいにマジェスティがアルコに心配そうに言った。アルコは自分は体調不良ということになっていたのだと察した。ディンがどんな顔をしているかは、見ることができなかった。