第23章 応酬
本当によかった
しかし、ローはやけに詳しいな
まぁ、海のお医者さんの常識なのかな
「卵の確認までしてもらったとか」
マジェスティが口を挟む。
この人も詳しいの?
知らなかったのはひょっとして自分だけなのか
そんな心配がよぎった様子のアルコに、ディンは丁寧に説明してくれた。
「寄生したのがメスだった場合、血液中に卵が放出される可能性があるんですよ」
「おぞましいね」
「通常は『身体の一部を1日中冷やす』という処置をします。そうすれば、卵はふ化せず死んでしまいますから」
へ~、なるほど
それでディンはバケツに水を汲んで持ってきたのか
アルコが興味を持ってディンの解説を聞いているので、ローは補足した。
「血液は1分程で身体を循環してるが、実際はリンパ液や組織液に染みだして循環している。
体液が一回りするまで、念のため1日は、身体の一部を冷やし続けて卵を殺すことが必要だ」
「バケツの水程度で大丈夫なの? 氷とかじゃなくて」
「大丈夫です。体温よりほんの少しでも低ければすぐに死滅します。
しょせん“寄生虫”ですから、寄生した体内の環境でしか生きられません。環境の変化には非常に弱いんです。
ですから、海中にいる生物からは、よっぽどの確率でないと卵はふ化しないので伝播しません。海水で冷やされますからね。
ただ、陸上生物に卵が産みつけられた場合…放置すると、2日後には宿主を食い破って出てきます」
「なるほど…怖いね。“イチモツ”ナントカは」
「…マグロノハネボウシモドキオタカラツリヤドリ です」
「あ、“オタカラ”ナントカ か」
王妃の卑猥さが、いつの間にか伝染ってしまった。
恐ろしい生態や対処方法は理解できたが、その呪文だけはどうしても覚えられない。