第23章 応酬
王妃が倒れたタイミングで、なぜか“生物襲撃”はピタリと止んだ。
海兵達が、警戒を続けながら甲板の後処理をした。アルコは少しそれを手伝ったが、ローは「放っとけ」と言って部屋でシャワーを浴びて休んでいた。
*
夕方
アルコもシャワーを浴びていると、王国の侍女が食事を運んできてくれた。
ちょうど二人で食事を終えたタイミングで、再び扉をノックされる。
開けるとディンとマジェスティが様々な飲み物を揃えたお盆を持って立っていた。
アルコはそれを受け取り、ローにウィスキーでいいか、と言って作り始める。
「あなた達も?」
「ああ、頼む」
「すみません」
皆にグラスを配って、ベッドサイドの丸椅子を入り口付近に差し出し、アルコはローと膝を突き合わせるようにベッドに座った。
デスクの椅子に勝手に座ったマジェスティはホッとした様子でローに礼を言った。
「助かった。王妃に何かあったら、国際問題だ」
王妃を嫌っていそうだった彼からそんな言葉が出てきたことが、事の重大さを表していた。
「あの虫? 何なの?」
「マグロノハネボウシモドキオタカラツリヤドリは、ナマコに寄生している線虫だ」
「ふ~ん…」
ローの説明で十分だったのだが、丸椅子に腰かけたディンが追加で解説をしてくれた。
『マグロノハネボウシ』はクラゲ。
『マグロノハネボウシモドキ』は、そのクラゲに似たナマコ。
『マグロノハネボウシモドキオタカラツリヤドリ』は、そのナマコに寄生する線虫。
ぬめぬめした生き物を宿主とする線虫で、宝石やお宝に似たものを宿主の分泌液を固めて作り、それに興味を持って触ったものにも寄生することがあるらしい。
王妃が触ってしまったパールのネックレスみたいなヤツがそれだ。
「意識がないのが幸いだったな。
まぁ、フツーは意識を保っていられないハズだ」
「痛そうだったね」
「1日は死ぬほどの痛み、激痛。アイツは血管中をはい回る」
「1日経つとどうなるの?」
「…手遅れ」
少し言い淀んでから、ローはウィスキーを傾けた。