第23章 応酬
その部屋には小さなデスクと洗面台、2つのベッドがあった。ベッドの間にある丸窓からは先ほどまでいた海軍本部の要塞が見えた。窓をのぞき下をみると、滑るように進む帆船が、海面に尾のような白い線を描いている。
直接甲板に出られるこの部屋は、交代の見張りのための仮眠室か何かなのだろう。
丸窓に低い天井。
書斎のような雰囲気が、潜水艦の船長室を思わせ、少し懐かしい。
「そう言えば“条件”って? この船に乗せてもらうのに、何か条件つけたの?」
アルコは丸窓に手をかけたまま、振り返って聞いた。
「ああ、この部屋だ」
「部屋が…いるの? あ、治療するんだっけ」
「いや…」
「航海、長い?」
「いや、3日くらいで着くハズだ」
「? …そっか」
ローは帽子を脱いで、デスクにぽいっと放った。
「そろそろ…切れてきた」
「? なにが」
「“部屋”は……アルコと こうしてェからに決まってるだろ」
「──!?」
予想外の直球の迫り方に、アルコは ほほを染めて目線をそらす。
片腕で腰を、片手で頭をとらえられ、耳元に唇を寄せてくる。耳介にキスをされ、水音が脳内を支配した。身体の芯がムズムズと熱を持ち、アルコはたまらず身をよじる。
「こっ…んなところで、嫌だよ」
「嫌、か」
「だって…落ち着かないじゃない」
アルコの視線の先には、板張りの入り口の扉。扉と同じ素材の一面の壁を隔てた向こう側からは、人の気配がする。まだ出航直後ということもあり、航海の始まりの雰囲気を引きずった船員や海兵のわいわいとした声が聞こえる。