第23章 応酬
船が岸を離れ、進行方向である大海原へ船首を向けたところで、足元にボールがコロコロと転がってきた。
ローはきっと気づいているくせに無反応なので、アルコは仕方なくボールを拾い上げた。やはりそのボールは、見た目から想像するよりもずいぶん重たかった。
「七武海 トラファルガー・ロー…。
貴様の“条件”は飲んだからな。協力を頼むぞ」
(“条件”………?
…あれ? ロー、どしたの)
アルコが見上げたローのその顔は、何だか少しほほを赤らめ、口を固く結んでいるが嬉しさを噛み殺しているというか、そんな感じだった。
「マンU (ユー)………」
ローが突然、淫語のような謎の単語をつぶやいた。
え、なに?
「フッ………貴様」
まんざらでもない、といった表情で海軍の男はそれに反応している。
え? なんなの
アルコは混乱した顔で二人を訝(いぶか)しむ。
「女…、まさかおれを知らねェのかっ?!」
「知らないです」
「元マンチェスター・ウニテッドのマジェスティだぞ。右サイドクロスの。知らないのか、ありえねェ」
「知らないよ」
ローまで、突然 饒舌(じょうぜつ)になり責めてくるので驚いた。
なんか…スポーツの話? この大佐と呼ばれている男が、元スポーツ選手なの?
………で、だから、なんなの。
「くそ…。おれのこと知ってりゃ、女はイチコロのハズだろ…」
いやぁ………。そうなの?
中年に差し掛かって脂が乗ったその男の自信に満ちあふれた態度の原因がわかった。原因はわかっても、アルコには理解はできなかった。