第22章 Riot Grrrls
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目の前を流れていく穏やかで荘厳な街並み。
幌(ほろ)の無い客車は、聖地マリージョアの景色や空気をダイレクトに浴びていた。
景色とともに風がほほにあたり、通りすぎるが、前に座っているヒナが吐き出した かすかに甘いタバコの煙は、アルコのまわりに漂ったままだった。
2列の客車の後列に座ったローとアルコは、前列に座っているヒナのタバコの煙で、この地の異様に歪んだ空気から守られているようにすら感じた。
街にあまり人影はない。
人通りの少ない道を選んで進んでいるのか。
世界貴族 天竜人
奴隷制度
この世界の歪み・・・
「あまり心に入れるな。眠れるなら、眠っとけ」
かぶったフードのすきまの狭い視界から 流れる景色を凝視しているアルコに対して、ローは静かに言った。
ローが言葉を発したのに反応したヒナは、胸元から銀色の円筒形のケースを出して、吸っていたタバコを押し込んだ。
「あんた達…ある天竜人を避けるために、レッドラインを渡る機会をうかがってたんだとか。
そもそも、天竜人がここに何人いると思ってるのよ。そんな無駄なこと………」
「弁当食うか」
「今っ?!」
「聞きなさいよっ!!」
ローは膝の上でシャッキーの弁当を広げた。
「暇だろ。そういえば、腹も減った」
ヒナは髪をぐしゃりと かきあげているが、ローはピックに刺さった煮物をもう食べ始めていた。
アルコにも差し出され、ピックに刺さった煮豆を口に入れた。
ローの器の大きさと、シャッキーの煮豆の懐かしくて ほどよい甘味を感じて、不安な心が少しあたたかくなった。
「お前達も食うか」
御者台に座って馬車を運転している男に、ごま団子を差し出した。
「あぁ~、うまいっ! コレ、うまいっスねっ!」
「ちゃんと前見て、運転してよ」
「食うか」
「…………」
ヒナは、ローが差し出した弁当に目を向けたまま、じっと考え込んでいる。
「ヒナさんにはコレを。カルシウム多めで」
アルコが小松菜をはさみ焼きにしたようなせんべいを選んで差し出した。
「だな」
「………あんた達、失礼ね」
そう言いつつも ヒナはせんべいを受け取り、パリパリと食べ始めた。
「………美味(うま)いわね」