第21章 in the silence
その日の夜
シャボンディパーク
特設野外ステージ
ステージ中央に立つ“ソウルキング”
彼が従えた5人編成のバンドの中に、竪琴を携えたアルコの姿はあった。
“ソウルキング”のライブは最高潮の盛り上がりをみせていた。
ピアノ、バイオリン、サックス………楽器とあらば何でもこなせる彼が最後に構えたのはギター。
ファンクでロックでジャジーなサウンド。
演奏はもとより、その歌声はまさに骨身に沁みるものだった。
ギターとベースは動き回って身体でリズムを刻みながら歌うように奏でているのはもちろんのこと、ドラムまでも立ちあがりバスドラもろくに踏まず、スティックを投げ捨て、吠えながら素手で叩き始めた。
アルコも最後の曲だけは立ち上がって弾いた。
自分でも驚いた。立って弾いたことなど、今まで一度もない。
左腕で竪琴を抱え、右手だけで激しく奏でる。軽やかなステップで、時にくるくると回りながら弾いた。スリットの入った黒いドレスの裾と、片腕だけについた薄布が回転とともに膨らんだ。
そんなことができる自分にも驚いたし、自分にそんなことをさせてしまう“ソウルキング”に、やはり何より驚いた。
型破りな演奏。
音楽としてはメチャクチャなものだったかもしれない。
しかし、大歓声とともに響き渡ったその音は、ソウルフルに人々の魂を揺さぶった。その証拠に、観衆は拳を突き上げたり、涙を流したりしている。
「また来るぜ!!!」
観衆の大歓声
今は無名の新人で、今回は数百人程度の観衆だったが、いずれは彼の音楽が、ビッグウェーブを起こすことを、誰もが予感した。