第21章 in the silence
お盆に乗ったおかずの中から、アルコは“あるもの”を、人差し指と中指で挟んでローの目の前に差し出した。
「私は、“海苔”が嫌い」
笑いすぎた後の涙が残った目で挑発的に差し出された海苔を、ローは受け取った。
「………なんでだよ、うまいだろ」
「なんか、紙みたいじゃない」
「湿ってればいいのか。おにぎりで」
「嫌だよ。湿った紙みたいで」
・・・
「おれ達 ───────」
「私達 ────────」
「………………………」
「お互い、知らないことが多いね」
「そうだな。まァ………いいんじゃねェか。
その方が面白ェだろ」
そう言ってローは静かに笑った。
『面白い』か
そうだね
いちいち真に受けて
勝手に悲しむんじゃなくて
『面白』がれれば、いいね
「 ────── ちょっと」
そんなことを考えていたアルコの皿に、梅干しを勝手に乗せてくる。
「“こだわり”があるんだよ、男には」
はっ
男の“こだわり”なんて
たいてい“わがまま”か“好き嫌い”じゃない
アルコは手を合わせて小さく「いただきます」と言ってから、味噌汁をすすり始める。
「船、買うかも…なんでしょ? いくらくらい必要かな」
「そうだな。1000万………は、あると楽だな。もう半分くらいは貯まってる」
「え、すごい!
さすが名医。ぼったくってるんだ」
「何が悪ィんだ」
悪どい顔でアルコの分の海苔の袋も開けた。
「ねぇ、私も稼ぎたい。ドレスもあるし、どっかで弾けば数10万は稼げるよ。宿代くらいにはなるかな」
「あと一週間は、大人しくしてろ」
「はーい、先生」
朝日が高くなってくる時間。
もうすぐシャボン玉の観覧車が動き始める。