第21章 in the silence
『預けろよ
もっとおれに、手放しで』
二人で船を降り、治療しながら旅をすることになった時、ローに言われた言葉。
『心の呪縛』を解くためには、もっと自分の心を自由に。
ローを信頼してすべてを預けてみろ、という意味だろう。
嬉しかった。
預けられるものなら預けたい、と思った。
しかし、そう言われても………アルコは具体的に どうすればいいのかわからなかった。
色々考えた末、
まずは
気安く『ありがとう』と言わないようにしてみた。
治療してもらうのが当たり前みたいに。
前までいたホテルで右腕の治療をしてもらった時。食事を準備してもらった時。荷物を持ってもらった時。
すべてローに預けて、それを当たり前みたいに思ってみよう、と試みた。
しかし、素直に礼や気持ちを表現することを大切に生きてきたアルコにとって、それは逆に心苦しく、予想以上に しんどいことだった。
より良いホテルを準備してもらった。
荷物を持って、身体を気遣いながら、移動させてもらった。
コーヒーを淹れてもらった。
体質のことを考えてもらった。
また治療してもらった。
これからの旅の資金集めをしてもらっている。
『ありがとう』と言わないことで、自分を抑え込む方が、身体に悪い気がした。