第21章 in the silence
「お前の体質は、だいたい解ってきた」
リュックに入っていた紙の束を取り出して、何か書き込みながら言った。
お医者さんみたいなその顔に、少し距離を感じた。いや、お医者さんなのは わかってるんだけど。
顔、左腕、体内
この3ヵ所は慎重に、とくに体内は きちんとした設備のあるところで後日治療する、と説明された。
QOL(quality of life 生活の質)に直結する、顔。
同じくQOLに関わるほど、アザが広がっている、左腕。
体内については、どれくらい残っているかわからないので、身体の反応をみながら少しずつ治療しなければならないらしい。
それ以外の場所で、ということで脇腹の珀鉛を取り除かれた。
ローに向かって横向きにベッドに寝て、服をめくって素肌の腹を出した。
(キスされるんだろうか、お腹に)
1週間前のことを思い出す。
治療が終わった後、患部の二の腕に『仕上げ』とばかりにキスを落とされたことを思い出した。
治療の終わりが近づくにつれて、そんなことを考え始めてしまった。
見た目には穏やかに目を閉じているが、心の中では密か戦争状態。ドキドキする心臓を、なんとかして抑える戦いの真っ最中だった。
「………………っ!」
予告なく痛み止めの注射を腹に打たれ、小さくビクリとした。
「悪ィ。寝てるかと」
目を開けると、注射の針先から目をそらすことのないローの真剣な顔があって、とたんに邪(よこしま)な自分が恥ずかしくなった。
「ごめん、びっくりしただけ。大丈夫」
アルコは手の甲を口にあてて、赤くなっているかもしれない顔を隠した。