第21章 in the silence
~ 1週間後 ~
「金が貯まってきたから宿を移動する」
荷物を持って歩くローの少し後ろをついていく。竪琴くらい自分で担ぐ、と言ったのだが無視された。
観光客と買い物客でにぎわう通りを歩いた。店先に並ぶ野菜や果物、加工された食料品に目を滑らせていると
「先生っ!」
若い女の子の黄色い声がかかった。アルコはローに言っていたのだと気づくまでにずいぶん時間がかかった。
その娘は母親らしき人物を放ったらかしにして、ローの腕に手を添えながら何やらもったいぶった話し方でローを引き留めていた。
アルコは辺りを見回した。店先に並べられた果物に目を向けていると、八百屋のおばちゃんに試食を進められたので、見たことのない赤い実をいただいた。旬だという割にはえらい酸っぱい実だった。
「おい」
不機嫌なローの声で呼ばれたので、おばちゃんに謝罪してから店先を離れた。
女の子の手を虫でも払うかのように退けて、安静にしとけ、と言って歩み始めた。アルコは女の子に向けられた視線に刺されながら、ローを追いかけた。
「なんとかしろよ」
「自分でなんとかしてよ」
そう言いながら、思わず笑ってしまった。
本当に
変なとこで、無駄に 優しいんだから。