第20章 宝物
「もう出航するの?」
強い風が吹き終わった時に、アルコは海を見据えたまま言った。
後ろに感じた気配に対して、振り返らずに。
「出航なら ─── もうした」
その言葉に驚いて振り返ると、ローは大きな荷物を背負って立っていた。
「え」
何、それ。
何、その荷物。
「ココに残って…やることがあるの?」
「……………いや…」
歯切れの悪い返事に、アルコは再び海に目を向けた。目の前のシャボン玉を突っついたが、割れなかった。
「アイツらは潜水艦で下から、
おれ達は歩いて上から、“新世界”に入る」
「!!!?」
シャボン玉が割れた。
空中でその場に漂ったしぶきを、消えるまで見届けた。
「おれ…達??」
「おれと………お前だ」
「え、ふたりで?」
ローは答えない代わりに、背負っていた大きなリュックと自分の刀を竪琴の隣に置いた。
「どうして………」
ローの顔を見るが、今度は彼が海に目を向けたまま、何かを考えているようだ。慎重に言葉を選んでいるのか、なかなか返事は返ってこない。
長い沈黙の中、アルコは返事を推測した。
『そうするのが、最善策だから』
誰にとって最善か。
ロー
クルー達
そしてきっと、私
だから、そうしたんだ。
いつでも冷静に『最善策』を選びとる。
ローはそういう人だから。