第1章 “麦わら”との冒険
*
「このおれを越えてみよ ロロノア!!!」
「二度と敗けねェから!!!!」
(……ウソでしょ)
“男たちの戦い”に手出しどころか、身動きすらできなかった。息をするのも忘れていた。
生命力
熱量
羨望
焦燥
嫉妬
これらがごちゃ混ぜになった感情が、彼女の目の中の冷たい輝きを押し退けた。
──自分は母親にもらった『呪い』で、もうじき死ぬ。それなのに、剣や竪琴の腕を磨いて何になる
常にかかえている無常観、あきらめ。
彼女の心の一部は死んでいた。
「死んだほうがマシだ」
本当に死が迫っているにもかかわらず、そう言い切った若い剣士。
今にも死にそうなこの男が、なぜこんなにも生命力を放っているの?
私のほうがよっぽど
──── 死んでる
“弱くて強い”
師は若い剣士をそのように表現した。
最弱の海、イーストブルー
私は この男よりは強いハズ
なのになぜ 勝てる気がしないの
今の私は ────“強くても弱い”
いてもたってもいられない、とはこのことだ。
彼女は、決心する。
「いい チームだ
また会いたいものだ
お前達とは…」
“鷹の目”は“麦わら”に静かに語る。
「!」
「帰るぞ」
背を向けた剣士の後ろで
「あなたが船長ね」
彼女は麦わら帽子の少年に声をかける。
「ねえ、グランドラインまで私を船に乗せてくれない?」
「??は??」
「おい。帰るぞ」
「おじさま、私、この人達と帰るわ」
「お願い」
振り返る剣士の目は、場が凍るほどに凄みを増している。
「帰るぞ」
「帰れよ。剣士のおっさん、怒ってるぞ」
麦わら帽子の少年は、あまり感情を込めない顔で言った。
男同士の決闘とは言え、仲間を瀕死にした張本人たちとは、深いかかわり合いになりたくないのだろう。
「私、もうあんまり時間がないハズ」
彼女はうつむいたまま師である剣士に向き直る。
「そもそも、手詰まりでしょ。もう何年も、何の情報もない。どうせなら私も ───」
─── 私も 弱くて強いあの剣士みたいに
「自分を生きたい」
「!!!」
師である剣士は、驚きと嬉しさを押し殺したような顔で、彼女を見た。
(生きたい、と言ったか)
鋭い“鷹の目つき”はそのまま、口角を上げて笑った。