第20章 宝物
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時間は すこし前
会場2階奥 VIPルーム No.3
「ご覧いただいたのが、新薬『炎国(エンゴク)』…」
たてがみのような長い黒髪につり目の男が電伝虫に向かってそう語りかけた。男は、白衣のようなガスのような その身にまとったものを軽く羽織り直す。
M(マスター)・シーザー・クラウン
元政府の科学者だが、有毒ガスによる大事故を起こし現在は賞金首の犯罪者として『ある島』で危険な研究を続けている。
「炎を圧縮したキャンディだ。水分と反応して発生したガスを吸い込むと、身体の内部から燃える……!
シュロロロロロ……
血が沸騰するような感覚だろうなァ…」
暗い部屋。
シーザーの正面にはいくつもの映像が、電伝虫によって写し出されている。
会場の様子だけでなく、どこか別の場所にいるらしい いくつかの人影の姿もある。それらの人影も暗く、相手の顔はわからない。
人影の1人が、低い声を発した。
「燃やしたいなら、火をつけて燃やせばいい。わざわざ高い金を出して、そんなものを買わなくてもな」
シーザーは歪んだ顔をさらに歪めるが、わざとらしく優しい声を作った。
「生命にだけ作用し、沸騰する…。
本人だけじゃない。その熱に触れた生命体にも感染していく。
……炎なら、周りまで燃えると色々面倒な場合もあるだろう?」
「……なるほど」
低い声の男は、画面から遠ざかるように椅子に座り直した。
「もし、気に入って貰えたなら ────
取り引きをしようじゃないか…!!」