第20章 宝物
のんきに歓談を続けている人達をかき分けると、そこには先ほどよりも凄惨な状況が広がっていた。
息も絶え絶えの赤い顔をした、中年の男。顔が沸騰したようで、やけどのような水疱ができはじめている。
それだけではない。
悲鳴のような声をかけ続け、男の身体を揺すっていた妻のような女性の腕にまで水疱が伝染(うつ)ったようだ。
「熱っ?!! あっつい!!! な、何なのよコレっ!!」
500人以上の人がいる会場。広い会場内の一部は悲鳴があがり始めたが、それはまだ ほんの一角。パニック状態という程でもない。その様子を直接見ていない客達は、騒ぐ客を迷惑そうにみるだけで、関心にもとめていないようだ。
「いた。2階だ。No.3の部屋。頼む」
「手は出すなよ。『誰が何のためにやっているか』、それだけ知れれば、それでいい」
ペンギンが何かをみつけたようだ。ローは気をつけろ、と言って“ROOM”を発動した。
事前に仕込んでいたのか。
ペンギンがいたところには1粒の真珠が置かれていた。シャチは人混みに紛れながら、2階へと続く階段へ向かっていった。
「ロー、お願い」
アルコはローのスーツの腕をつかんで、もだえる男に目配せをした。
「………」
ローは少し考えてから手をかざして素早く能力を発動し、小さく“スキャン”とつぶやいた。
騒ぎが広がる最中、入り口の方からも声があがる。
「海軍だァっ!!」
ローとアルコは振り返り、驚いた顔を見合わせる。
「海軍………?! なんで今ごろ。“見逃す”って言ってたハズじゃあ………」
「まァ………“上”と“現場”は違うもんだ。誰を捕まえてェんだか」
ローはなぜかアルコを肩を持ってクルリと後ろを向かせた。丁寧にハートのネックレスを外しながら言う。
「行くぞ。おれ達はこっちを抑える」
「??
え、海軍を? 黒幕のほうはいいの?
でも、今探らないと ────」
「ペンギン達に任せろ。もとからおれ達は囮(おとり)だ」
ハートのネックレスを取りあげられてから「手を出せ」と言われる。言う通りにするとゴトゴトとアルコの手のひらいっぱいに宝石のついた装飾品が落ちてきた。
「つけとけ。今だけでいい。
コレは大事なんだろ。預かっといてやるから」