第20章 宝物
パン、パン!!
「皆さん、ご安心ください!」
騒然とした中に、手を叩く音と どこかで聞いたことのあるうさんくさい声が響いた。
それでもアルコはそちらに目線を向けない。
(出てきた)
会場の角、料理が運ばれてくるバックヤードに続いているであろう扉から、大げさな防護服を着た4人が出てきた。4人は担架を持って倒れた女のもとへ向かった。
4人の動きとともに視線を倒れた女に戻すが、時折2階へも注目しつつ、様子をうかがう。
「!」
倒れた女にバサッと白い布がかけられる直前、女の素肌の腕が赤くパンパンに腫れ上がり泡のようなものが吹き出しているようにみえた。
「彼女、持病持ちだそうで………。専用の治療薬を預かっていたのでした。ご心配なく、どうぞ引き続き お食事とご歓談を」
(────っ!! あの男)
ヒューマン・オークションの時。
アルコに了解もなく、奴隷の首輪をはめた男。余興の演奏する芸人として出演していたのに勝手に奴隷として売り飛ばした男。大勢の観衆の前でドレスを破いた男。
名前は ──── ………なんだっけ
力が入ったアルコの身体に何かが触れた。と思った次の瞬間、なぜか会場のだいぶ隅の方に移動していた。
ローが能力を使って、現場から離れたのだ。
「何か 見たか」
アルコが背中を預けている壁に、ローはひじでもたれかかった。押し迫られるように、近い距離で聞いてくる。
ローの新しい帽子の、前に突きでた つばで アルコ視界は周囲から遮断された。
「───────」
「────」
周囲の人達は、チラリと二人をみては気まずい顔で遠ざかっていく。
完璧にドレスアップした いい雰囲気の男女が口づけを交わしている、と誰もが思っているようだった。