第20章 宝物
*
ローは、この島の大きな会場で行われる10日後の宝石取引と展示会イベントに目をつけた。
イベントの情報収集と下準備のためか、毎日どこかへひとりで出かけていき、船を不在にすることが多かった。
時折、クルー達に何かを準備させたり、こういう場合こういう事ができるか、など何かを確認をしていたがアルコに声がかかることはなかった。
(ずいぶん忙しそうだな)
アルコは取引当日までの10日間、シャッキーの店に行って食事をしては竪琴を弾いたり、街をぶらぶらしたりしていた。もちろん、ベポか誰かの監視付きで。
シャボンディ諸島は、ここ数日で明らかに雰囲気が変わってきた。スーツやドレス姿のいかにも金持ちの空気をまとった人間が多くなり、ボディガードのような屈強な黒ずくめのスーツの男達も目につくようになった。
シャッキーにも気をつけろと言われ、アルコは用もなく街をぶらつくことを控えるようにした。
ある日。
ローもいない、クルー達も街へ行ったのか船に残っている人数が少ない日。
アルコはひとりで潜水艦を降りた。竪琴を担いで海岸沿いを歩く。
この島に大地の地面はない。網目のように複雑に敷き詰められたマングローブの根に、長年むしたコケが土を作ったのだろう。島の内部へ数10mも入れば、ここが地面のない、漂う木の根元だということを忘れてしまう。
しかし、海岸はマングローブの根の網目がほどけるように、根の隙間からは海面がのぞいている。
アルコは潜水艦からは見えない場所まで歩いてきたところで、竪琴から大剣を抜いた。
足場が悪いのも好都合。
そこら中に舞い上がるシャボン玉を相手に、剣を振り始めた。