第19章 察知
「お前の身体の話は、もういいだろ」
耳もとに近いところでそう言われ、足がすくむ。身体の芯が熱を持つ。
「やっと来たな。今ココでは……『医者』としてじゃねェ」
あたたかい吐息が首筋にかかり、そのまま首に濡れたキスをされた。
いきなり前戯を思わせるようなその行為に、さすがにアルコはひるみ、警戒した。固まりそうな身体に抵抗して、声をあげる。
「知ってるでしょ、今 ────
!!
まさか、ヤるの? うそでしょ。どんだけ酔狂なの」
「違ェよ」
「……でも」
(性処理用の女になるのは…、やっぱり嫌だ)
ローはアルコを向き直らせ、未だに複雑な表情をしているアルコの顔にかかった髪を優しく分けた。近い距離で向き合っているのに、ローは その視線をどっかよそを向けたまま言った。
「ヤれなくても……別にいいだろ」
え……?? いいの?
ふれあいだけで?
『男』なのに??
そんなの ────
絶・対、あ・り・得・な・い
あっけにとられたような、信じられない、そんなバカなと言ったような、色気のない顔でローを見つめる。
「くっくっくっ……」
ローがそれを見て笑いだした。
なに笑ってんの
なんでいきなり笑うの
どこがおかしいの
なんかムカつく
「なに?」
「……いや。
お前って、『男』のことわかってるようで、わかってねェよな」
「……っ?!」
怒りが、一瞬で驚きと恥ずかしさに置き換わった。
ローは笑いをこらえずに続けた。
「キレたり、赤くなったり、忙しくて飽きねェな。寝てる時のほうが、もうちょっと色気あったぞ」
ヒドい
自分だって全っ然、女心わかってないくせに
ローは、ふいとアルコから離れて、帽子をデスクに投げるように置いてから、ばふりとベッドに横になった。
「はやく本選んで来いよ。おれは寝てねェんだ」