第18章 それぞれの治療
ローとベポが下船した後、ペンギンが買い出しや上陸の順番を仕切った。
アルコは最初の船番をかって出て、ジャンバールと一緒に午前中は船に残った。
青空の広がる午前中。
二人の頭上に雲はなく、遠くの海上にのみ小さな吹き出しのような形の雲が見えた。
アルコが処置室のシーツを持ってきて洗濯を始めると、ジャンバールが大量のシーツを追加で持ってきた。
洗濯し終わったシーツを、二人で次々に甲板に干す。
ジャンバールはマストに登り、シーツをつけたロープを高いところから順番に3列固定した。
潮風に はためく数十枚の白い布。
これだけ白旗を上げていれば、海軍も手出しはしまい。
二人は甲板に寝ころがって、気持ちいいねと言い合った。
*
午後になり、クルー達が何人か戻ってきた。
「アルコ、島を見に行こう」
「待って。コレ部屋に置いてくる」
アルコは竪琴を肩に抱え、部屋に一旦戻ろうと腰をあげた。
「置いていくのか。いつでも持っている大事なものじゃないのか」
「だって、重いでしょ」
アルコは歩かずにジャンバールに担いでもらうという話だったから、少しでも軽いほうがいいと思ったのだ。
「おれを、舐めるな」
ジャンバールは竪琴を担いだアルコごと肩にひょいと乗せた。
急に地面が遠くなり、予想以上の視界の高さに小さな恐怖を感じる。しかし厚みのあるジャンバールの肩は、これまた予想以上に座り心地がよかった。
ジャンバールがアルコを乗せている方の肩から手を差し出し「つかまるか」と聞いてきたが、アルコは「大丈夫」と言って彼の首の後ろに手をあてバランスをとった。
アルコを乗せたジャンバールは、慎重に下船し、デルタ島の通りを歩いた。
実際は女性を乗せた大男なのだが、遠目には女の子を乗せた父親のようにみえた。
そのため行き交う人々は彼らが近づいて来て初めて、驚いたように二人を見上げる。
しかし、清潔でセレブな街の人々は見るからに忙しそうな人が多く、二人に対してあまり関心がない様子で、皆それぞれの目的地へ向けて歩みを進めている。