第17章 合流
「見えるか」
ミホークはレースのカーテンを大きく開け、窓の外の遠くの海を目配せする。
ベッドに座ったまま首を伸ばして広い海に目をやると、ちょこんと見えるのは黄色いマストに黒い帆を立てた船。いや、普通の船にしては船体は小さく、まるで船全体が海に沈んでいるようだ。
──────── 潜水艦
「行ってこい。
………日に日に母親に似ていくお前を、おれの側に置いておくのも、限界だ」
「!」
「気をつけて行け」
ベッドに座ったままのアルコを強く抱きしめる。ミホークは、母親譲りのアルコの黒髪を名残惜し気に優しく慈しみ、そこに鼻を埋める。
「いつでも連絡しろ」
「「必ず帰ってこい」」
最後の言葉はハモるように口にして、二人は顔を近づけたまま笑った。
アルコはミホークの上がった口角の端に軽くキスをした。チュっという音が鳴ったが、恥ずかしさもいやらしさもない、敬意のこもったキスだった。
命の恩人であり、厳しい師匠であり、優しいおじさまであり、心配性の父親でもある『男』に、敬愛を込めて。
「ありがとう。“ミホーク”」
*
「ゴースト娘から」と言って部屋に残されたザックには、ハートのネックレスなどアルコの部屋にあった身の回りのものが入っていた。
その中に見慣れない化粧品が入っていた。黒の蝶やクモの巣でデザインされたそれらの化粧品は、濃いめのコンシーラーやファンデーションだった。
アザを隠すために使えそうなものを、ペローナが入れてくれたのだろう。
温かい心のまま、海軍が用意してくれた冷めた食事に手を合わせた。