第16章 生命
思考を途切れさせたのは、壁をすり抜けてホロホロと現れたペローナだった。ミホークから「アルコに構うな」とキツく言われたようで、ミホークが部屋にいないことをよく確認してから入って来た。
「お前も、バカの一員だったな」
痛々しい身体を見て そうホロホロと笑いながら言う。彼女の 誰の どんな状況に対しても変わらない物言いに、なんだかホッとした。
「ゾロは………どうしてる? …大丈夫?」
「……お前と一緒だ。大ケガして、ボーッとしてる」
「………………そっか」
彼女は食事作りやゾロの手当てなど、ミホークが何かと言いつけてくる用事がすべて自分の方に向けられることに文句を言いつつ、アルコの気を紛らわしてくれているようだった。
アルコは弱い笑顔で礼を言い、しばらく話をしていたが、包帯の隙間から白いアザがのぞいていたことに気づき、笑顔を引っ込めた。
「………なあ、それって」
「ごめん。できれば忘れて。病気だし、気味、悪いでしょ」
「そうかぁ? 薔薇みてェだ」
ホロホロホロ………と笑ってアルコの周りをくるくると舞った。
「え…………」
なんだか予想外の反応で、面食らった。まぁ、ほんの一部しか見えていないし、そんなもんなのかな。それとも、気味の悪いモノを可愛がる彼女らしい反応か。いいとも悪いとも言わないその言い方に、なんだかとても救われたし、少しあたたかい気持ちになった。
「そっちの赤いヤツもな」
ゴーストと一緒に右肩の後ろから ささやかれ、アルコはバッと首筋をおさえて目をむく。
さらに高らかなホロホロを響かせて正面の壁から消えて行った。
(薔薇ねぇ………)