第16章 生命
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ゾロとの死闘……いや、ただのケンカか。その当日を含め 丸3日間、療養した。
食事はペローナが作ってくれているようだが、食事を持ってきたり手当てをしてくれたりするのはミホークだった。
ミホークはアルコをとがめない。何も言わず、ただ手当てをした。アルコが何かを言おうとするのを先に察知して「休め」とだけ言った。アルコも、何が悪いのか、どうすればいいのか、そしてどうするつもりなのかがまだ明確ではないうちに話をするべきではないと思い、ミホークに謝ることはしなかった。
窓の外は、しとしとと降り続く雨。いつまで降るんだろう。この雨が止まないことには、自分も今の状況から抜け出せない気がした。
雨の音に耳を澄ませる。
ザ ────────
ザワザワ
ポ、ポツツ
ダ ────
元々静かな部屋に、雨の音だけが強調される。
そうだ、あの時も。
母の墓標の前で、雨の音を聴いていて、心の声を聴いていて、
それを中断された。
ゾロに中断されて、アルコは心を乱した。
怖かった。
まっすぐに向かって来そうな彼が怖かった。
向き合って、自分を保てる自信がなかった。
だから剣を握り、傷つけあうことに逃げた。
雨が弱まり、音が変化する。
サワ ────────
ピト、ピト
パタタ パタ
シ ────────
水がこんなにたくさんの種類の音を作り出すんだ。ひとつひとつが音階を持ち、協奏曲のような厚みすら感じた。
心を乱される前に考えていた感覚を再び思い起こす。水音に集中すると、何かがつかめそうな気がした。
でも、今の自分では………何かが足りない。
何だろう。何だ。
あの時。巨大な十字架の前で。
何を考えていた?
『農作業』、『健全さ』、『雨音』、『潜水艦』、『呪い』、『自分らしさ』────?