第15章 in the rain
そこからの二人の記憶はほとんどない。
激しさを増す、斬りつけ合い。
立ち込める島の怨念は、二人の衝突を煽るように黒い影をじりじりと寄せる。
剣と刀の衝突音と衝撃波で、怨念は巨大な地上花火のように一瞬散らされるが、滲み寄るスピードの方が速くいつのまにか二人の周りにまで迫っている。
お互い防御もろくにしない。
まるで肉食動物同士のぶつかり合い。目的のない、ただの殺し合い。もしくは、汚く肉欲をあさる獣の交尾。
ガッキィィン!! ズバッ!!!
「ぬあァアァ!!!」
一方は、笑みと苦痛を押し殺すような声をあげる猛獣。
ドシャッ!! ギン! キィィン!!!
「ん、あぁぁっ!!」
もう一方は、刺激に耐えて恍惚な表情をする雌豹。
オオォォゥゥゥ
オッオッオッオッ…
あちこちから雄のヒヒ達の興奮した悲鳴のような声があがる。
雄達の異様な雰囲気を察した雌達は、森の中に姿を隠し、必死に気配を消す。
いくつもできた血溜りを踏みつけて赤いしぶきが宙に舞い上がり、雨に混ざる。
二人の衝突の度に、赤い雨粒が一瞬止まったように空中で震え、ビリリと金平糖のような形になるが、すぐにまたどしゃどしゃとした雨に溶けていった。