第15章 in the rain
硬い地面。
覇気や技を使うなと言われた訳ではないが、二人とも暗黙のルールのように小細工はせず、体ひとつで大地に体当たりしている。
今日もゾロは、がむしゃらに鍬(くわ)を振っている。
アルコは、ゾロが掘り起こしたぼこぼこの地面を鋤(すき)で整えていく。
「暑くねェのか」
半裸のゾロが自分の鍬にもたれかかり、汗をぬぐっている。
「………………………暑いよ」
アルコのグローブや露出の少ない格好のことを言っているのだろう。クライガナ島は今日も曇り。この格好が日焼け対策ではないことは、明らかだ。
放っといてくれ。
「………………………」
ゾロは再び作業に戻っていく。
彼は この“修行”と言えるのか疑問が残る肉体労働で、何かつかんだのだろうか。
アルコは、正直なところ何もつかめていない。
ただ、さわやかで健全な気持ちにはなった。
さわやかとは程遠い天候のこの島で、そんな気持ちになれることが不思議でたまらず、それが面白かった。
始めこそ、ゾロと一緒にいると『あの日』のことを思い出し、意識してしまわないだろうかと気がかりで、二人きりにならないように常にミホークやペローナの居場所を確認し、行動していた。
しかし、農作業に集中するにつれて、そんな気持ちが消え去っていくことに気づいた。
強くなるために何かをつかむことより、今のアルコには大事なことのように思えた。
ゾロとの関係の変化は他にもあった。
以前だったら、対抗心から同じ作業を競うようにやっていただろう。
今は、彼の農作業…いや修行をサポートする気持ちのほうが強い。
(ゾロには、物足りないかもな)
アルコが張り合ってこないこと
ミホークが何も教えてくれないこと
農作業で強くなれるのかという疑問
それらを鍬にぶつけるように、ガツガツと作業を進めている。