第15章 in the rain
就寝前、ミホークの寝室に招かれた。
一緒に暮らしていた時もほとんど足を踏み入れたことがないその部屋は、ろうそくの明かりがともる寂しくてあたたかい部屋だった。
アルコは、もう寝るところだったのでストンとした締めつけのないノースリーブのグレーのワンピース一枚だったが、慌てて黒のストールを羽織って自室を出た。
ミホークの前では白いアザを隠す必要はないのだが、ゾロやペローナに廊下で会うかもしれない。それに、ローがつけた『赤いアザ』をミホークに見られる訳にはいかない。
腕を隠すようなその様子を見て、ミホークは謝罪を口にする。
「すまない。
勝手に客を居座らせたばかりに、これではお前の心が休まらないな。おれとお前の居城であるべきだった」
「いいのよ。私は治療があるからまた出ていかないといけないし。驚いたけど、楽しくていいじゃない」
ようやく二人は遠慮なく話ができた。
ローと合流の日にちはとくに定めてはいないが、治療の間隔は約1ヵ月。すでにここに来るまでに2週間ほどかかっているので、滞在は2週間程度を考えていることを伝えた。
ローの話もしたが、食事の時の反応が忘れられず、彼と男女の関係にあることなど到底言えなかった。
──── しかも『愛』がないなんて
汚れた“娘”でごめんね、“パパ”
せっかくだから、ここで少しでも強くなろう。
好きになってもらえなくても せめて強くなれば、ローの力になれるかもしれない。
先に身体を許すような女を、今さら大事に扱う可能性は、経験から考えても0に近いが、背中を預かるような存在にはなれるかもしれない。
珀鉛病の治療や、ローの船の様子を当たり障りなく話した。
珀鉛病のことを話題にしても、もう泣いたりはしなかった。やることはいっぱいあるし、そのための時間もあるのだから。
ミホークは、強がっているのではないかと心配したが、アルコは いたって前向きだった。「だって、生きられるんだよ」という言葉に、ミホークのほうが先に涙した。
──── 眼光が鋭く
周りから怖れられているけれど
『本当は』優しい ────
ローによく似た気質を持つミホークのことが『大好き』だと、改めて思った。
いや、逆か。
ミホークに似たところがあるから、きっとローのことを好きになったのだ。