第14章 分岐
城下町跡の中央にある崩れた噴水広場を、走って通り抜ける。石造りの丸い噴水はその原型を留めているが、水は枯れていて、がらんと巨大なドーナツ状の溝が口をあけている。中央に高くそびえる半裸の女神像は、片手と顔が崩れた状態で変わらぬポーズを決めていた。
(なんか………おかしいな)
一戦どころかボロボロになることも覚悟していたのに、ヒヒ達はおとなしいものだった。
ミホークの『客』が関係しているのかもしれない。誰かが覇気で蹴散らしたのか。
『客』か、それともミホーク自身か
推測を巡らせた頭のまま城門まで到達した。
大剣をおさめ、城の大きな金属製の扉に手をかけたが、力を込めていないのに重い扉が開いた。
ギギギギギギ………
扉の隙間は、ピンク色の羽で埋め尽くされる。
そのドぎつい色と匂いと覇気に、アルコは立ちすくむ。はだけたシャツにサングラスをかけた短髪の大男。
「女………?
ずいぶん にぎやかな城だな、オイ」
サングラスの大男は妙な色気を垂れ流し、長い舌をぐるりと口外で一周させながらアルコを見下ろした。
怖 ──────
「それに 構うな」
「!!」
ピンクの男のまがまがしい覇気を上回る、さらに恐ろしい覇気に包まれる。
まるで
獲物をとらえた無慈悲な“鷹”のような覇気。
──── ああ これは
私が、世界で一番
尊敬し、恐れ、信頼する 覇気
「ハッ………」
立ちすくむアルコを横目に男は通り過ぎる。ピンク色の羽がアルコの胸の先端をこすり、いやらしい匂いを引きずりながら去っていった。
────“天夜叉”
ドンキホーテ・ドフラミンゴ
七武海同士が直接会うなんて
やはり“あの戦争”以来
世界が動き出している
解かれない二人の覇気の狭間で、心音を落ち着けることができないアルコ。
「心配するな。くだらん交渉は決裂した」
気がつくとミホークはすぐそばに立っていた。
アルコは覇気を振り切って笑顔を作り、ミホークの首筋に飛びつく。
「ただいま」
「ああ。よく帰った」
ミホークは彼女を抱き返しながら、小さくなっていくピンク色の背中を威嚇し続けていた。