第14章 分岐
小型船の操縦席の椅子の背に座り、操縦桿を片足であやつる。
ブーツは脱いでるので持ち主の彼には勘弁してもらおう。
クライガナ島に着くまでにアルコにはどうしてもやらなければならないことがあった。
────剣の手入れ
竪琴の上部にある珀鉛製の細かい装飾。一見するとただの装飾に見える剣の柄を握り、スラリと引き抜いた。
分厚く、幅広の大きな剣。
剣自体には刃はなく、鋭さはない。
そのまま使うなら鈍器にしかならないが、覇気を纏わせることで硬く、鋭い斬撃を生み出す。
(おまたせ。あなたの出番よ)
竪琴がいい音で鳴るのも、この刀身の共鳴が欠かせない。
しかし、ここ数週間は剣を振るどころか抜いてあげる機会もなかった。
語りかけるように眺める刀身に、暗雲が写る。
クライガナ島・シッケアール王国跡
アカルイデ島の山脈の影になり、ほとんど日が差さない上に、島の上空は暗雲に包まれ、渦巻く怨念を背景に携えている。かつて激しい内戦があり、現在は廃墟と化した島の頂きに、ミホークが居城としている古城がそびえ立つ。
吹き抜ける湿気を多く含んだ風は、「ひー」や「あー」と言う怨念のうめき声のようにも聞こえる。最寄りのアカルイデ島の住人は、この不気味な風のせいもあり、誰一人としてクライガナ島に近づく者はいない。世界に名を轟かせる眼光鋭い大剣豪が住み処にし始めたとあっては、なおさらだ。
しかし、アルコは懐しさにほほを緩めた。怨念の「おかえり」の声を心地よさげに受け入れる。
ここからは、剣(こちら)の出番。
ローの役に立ちたい。
そのためにも、ついでに強くなれたらいいな。
時に怨念に取りつかれたように襲ってくるヒヒ達を散らしながら城まで帰らねばならない。決意を固め、大剣で湿った風を斬った。
風はひょうっと返事をした。