第13章 表と裏
勢いよく飛び込んだのに足がつかないことに気づき、アルコは慌てて海中を見渡して口一を探した。
海中に漂う長い黒髪のすきま
ぶくぶくの中を
目を閉じて沈んでいく口一
あぁ、きれい
ほんとだ
気づかなかったけど
この人、こんなに魅力的なんだ
思わず みとれるが、すぐに泳ぎだした。
下から肩に抱えて泳ぎあげ、コテージの照明が作る緑色の海を目印に浮上する。
力の抜けた口一の身体を、板張りの階段に乱暴に乗り上げさせた。
「はぁっ、はぁっ、……… はぁっ、 はぁっ」
「う………、ぐっ ……、はぁっ、 はっ、…げほっ げほっ 」
うっすら目を開け、海水を吐き出し始める口一の隣で、アルコは階段に膝を立てて座り、がっくりとうなだれて息を整えた。
海に嫌われた能力者を抱えて泳ぐのは、予想以上にきつかった。
それに、なんの前置きもなく こんなことをするなんて。バカなんじゃないのか。この男は。
疲れが落ち着いた後に感じたのは、安堵ではなく怒りだった。
「…はぁっ…… っ…死に、たいの…?」
「………はっ、死なねェよ。
………げほっ、はぁっ…はぁっ……
……お前が、いるだろ」
「ははっ。 ……っは、ははっ」
ぶつけたハズの怒りは、急に力を抜かれ、いとおしさに似た笑いに変えられた。
口一は水を含んで重くなったシャツをベシャッと脱ぎ捨て 重い身体を引きずりながら、後ろからアルコの布やワンピースに手をかけ、脱がしていった。