第13章 表と裏
「しようよ。私はしたい」
シャワーは浴びるけどね、と言ってヒラリと透けた布をひるがえし、腕の中からすり抜けて行くアルコの腰を、口一は再び捕らえなおした。
「もったいねェ……いいだろ、このままで」
そう独り言のようにつぶやき、脇腹のあたりに顔を寄せ、ワンピースドレスの柔らかい布ごと胸を押しつぶす。
スーハーという大きな呼吸で腹をくすぐられ、アルコは身をよじる。
「嗅ぐなっ! ほんっとに………無理。見てたでしょ? あっつい中、人前で演奏したの」
「汗なら、おれも かいてる」
ググググ…と、口一の顔が歪むほど押しのける。どこか本気のようで戯れのようなその攻防は、口一が発した ため息を合図に終了した。
「わかったよ」
解放されたアルコがくるりと背を向け、シャワー室へ向かうところを
──── ガシッ!!
口一は後ろから彼女の腰と足元を抱え、ひょいと持ち上げた。
「ちょっ……とっ!!」
「汗じゃなければいいんだな」
ガラリと入り口と反対側のガラス戸を開けると板張りベランダから階段が海に下っている。階段の両端に置かれたランプが、海中に小さな緑色のスポット作っているが、それ以外は真っ暗でなにもわからない。
水面も、深さも、
そこには本当に海があるのかさえも ─────
(う、うそでしょ、本気で ───)
ローに抱えられたまま、アルコの思考は停止した。走り出した彼の足音には、ためらいが一切 感じられない。
「───っ!!!!!?」
・ ・ ・
ドッ───ボン
・ ・ ・
浮遊感の後(のち)にくる、
薄暗さ
と
静寂
そして、冷たさ