第13章 表と裏
アルコは振り返り、店内を見渡した。
すでにクルー達の姿はなく、埋まっている席は半分くらいになっていた。演奏時には満席だったのだが、すべての余興も終わり、残った客達が静かに飲み続けていた。
ローはアルコが飲んでいるワインを見て、同じものを注文した。
ふたりは視線を交わさずに話し始める。
「自分は、男の誘いを断るんだな。『自由にすればいいのに』」
「だから、自由にしてる」
「……」
「私は、断りたいから、断ってる」
「なんで断るんだ」
「なんでってそりゃ……、何を言わせたいの」
急に女の顔になり、アルコはローを横目を向けた。
──── やっとこっちを向いた
ステージ上からは、チラリともこちらを見なかったクセに
『もう少し、話しでもしたほうが……って余計なお世話かね』
旧友のその助言と、
彼女の演奏と、
店の雰囲気と、
酒の勢いと、
隣の空席に受け入れられたことと、
まんざらでもなさそうなアルコの視線。
女の気持ちはわからない。
そんな面倒臭そうなものは、わかりたくもなかった。
今までの自分ならば。
「…わからねェな」
「?」
「自分はしないのに、おれはしても平気なのか」
アルコは、何かを決意したように姿勢を正す。肩に羽織っている薄布の装飾が、店内の照明を受けてキラキラと揺れた。
「平気なんて言ってない。嫌だよ。
でも、それを決めるのは、ローでしょ」
──── なるほど『自由主義』……か
でもそれは、自分が自由に振る舞うというよりは、相手に『自由であって欲しい』という意味の『自由主義』。
コイツは、それで本当に『自由』なのか