第13章 表と裏
ステージへの歓声と拍手が起こり、ふたりの視線はそちらに奪われた。アルコがステージに上がっていくのがみえる。
中央には豊満な色黒の女。
黒いきらびやかなドレスに、アルコと同じような薄布をまとっている。
女の後ろ、少し中央からずれたところのドラムセットに座ったのは、だらしない派手なシャツを着た金髪で長髪の男。
上手(かみて)のピアノには、スーツを着崩し髪を横に撫でつけた男が座った。
下手(しもて)にはアルコ。
豊満な女に紹介され、薄布のついた片手を広げ、深くおじぎをしてから、その場に座った。
行進を連想させるような、リズムが刻まれ始める。
誰もが知っている有名なナンバー。
イントロ部分が始まっただけで、軽く歓声があがり、そのうち中央の女がなまめかしく歌い始めた。
もともとピアノとドラムだけで成立していた伴奏なのだろう。アルコは、色を加える程度に控えめに弾いていたが、サビの部分になったとたん、彼女は歌とはまったく別のメロディを弾きはじめた。
お互いがお互いを引き立てるメロディ
寄り添うようで、寄り添わない
表と裏がくるくると入れ替わるような
それぞれのメロディ
誰もが口ずさめる馴染みの曲のハズが、新しい曲のように聴こえた。
店内の騒がしさの種類が変わる。
今まで大声で話していた客達も、視線は正面のまま顔を寄せあって話をする上品な騒々しさになった。
アルコは時折、ステージ上のヤツらと目配せしあって、楽しそうにリズムを合わせている。
その様子が、ローを苛立たせた。
目配せしあって演奏しているだけで、自分はこのイラつき。アイツは自分が他の女とヤってもあの笑顔のままなんだろうか。
おれなら殺してやる。
相手の男も。
アルコも。